1546人が本棚に入れています
本棚に追加
/389ページ
ふたりの気持ちは有難い。
でも、俺はやっぱり……確かめに行きたい。
誉が嘘を言う筈はないし、確かめたところで、事実を目にして、また気持ちが辛くなるのも、目に見えてる。
それでも……行って、確かめて…そうして、ちゃんと向き合うんだ。
向き合った上で、俺が出来ることを見付けたい。
「ひとりで…平気だ。熱がある訳じゃねぇし、それに…」
その先の言葉を飲み込む。
「そっかー…じゃあ、具合悪くて早退したって担任に言っとくよ~!ほら、誉っ!蒼ちゃんの荷物持って来てよ!」
「……本当に、ひとりで平気か?」
誉が俺の顔を見る。
「…おうっ!」
「分かった…今取って来る。それはそうと……友也、いい加減蒼から離れろっ!」
やっと誉が渋谷を制する言葉を告げた。
「…えーーー…抱き心地良いのになぁ~蒼ちゃん。丁度、俺の腕に収まるし?」
そして、またぎゅーっと俺を抱きしめる腕に力を入れる。
「…桐生が戻って来たら、友也が蒼に纏わり付いてたって、報告するぞ?…友也より、俺の方が桐生の信用あるからな、どんな制裁が下されるか、楽しみだな?」
「……へぇー…そういうこと言うんだ?いいよぉ~そしたら、蒼ちゃんに庇って貰うからっ!ただのスキンシップだってね!大和は蒼ちゃんに甘いから、蒼ちゃんの言葉は信じるでしょっ!」
……このふたり……本当に元に戻ったのか?
火花がバチバチしてる気が……
「…チッ!…後で覚えてろよ、友也」
そう捨て台詞を言い放ち、誉が階段を上ってく。
その誉の背中に向かって、
「望むところだしっ!」
負けん気の渋谷がそう言った。
「…泣くまで犯してやる…」
それに返した誉の言葉に、渋谷の口角が上がったのを、俺はバッチリ目にしてしまった。
…成程な……
「人をダシにして、誉の嫉妬心を煽るなよっ!巻き込まれる俺の身にもなりやがれっ!」
誉の姿が消えて直ぐに、俺を羽交い締めにしていた、渋谷の腕が解かれる。
最初のコメントを投稿しよう!