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ザ…ザザ…ザッ…!!
ノイズが入り乱れる無線通話
「現在、標的は家屋を破壊しながら浜松町を南下している模様…速やかに現地へ向かって下さい」
「ーーー了解」
そう一言答えると、男はビルからビルへと飛び移りながら目的地へと向かう
まるで重力を感じないかのように跳躍する彼は、凡そ人間とは呼べないものであった
タッ
「…着いた。すぐに交戦し拘束する」
「目的は殲滅です。拘束ではありません」
「……わかった…」
「気をつけて下さいね…畦さん」
無線越しに聴こえるその声は心配とは無縁の言葉だった
「…ああ」
そう言った瞬間、男は標的と思しき人物目掛け一足飛びで駆けた
標的は周囲の民家や店を破壊し続けていた
一瞬辺りを見回した後、男が言う
「花木順次、ステージ4罹患者の容疑で殲滅するーー」
花木順次と呼ばれたその男は、目を血走らせ男を殺意の眼差しで睨む
風貌から最早言語の通じる相手では無さそうだった
「……許せ」
「グガァアアアアア!!」
ゴオッ!!!
振りかぶった凶刃よりも先に、彼の刃が男の胸を貫いた
ドシュッ!
ピピッ…!
飛び散る血飛沫に顔色一つ変えず彼は無線の相手へと伝えた
「……殲滅完了。帰還する」
無線相手は安堵も、労いもなくさも当然かのように淡々と告げた
「お疲れ様です」
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