妄想

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妄想

 私はいつもと同じように朝、会社にむかう。電車に乗っている長さ「一時間」。 この長い通勤のなかで私の妄想は繰り広げられる。日々そのテーマは変わる。  昨日は電車に乗ってきた5歳くらいの男の子とそのお母さんについてだ。  男の子は母親に手をつれられて電車に乗り、おとなしく母親の横にちょこんと座った。電車の発車音が聞こえ、電車が動きだしたそのあとすぐに男の子は座っていた席をパッと降りて、スタスタスタこちらへ向かってくる。子供を注意しながら追いかける母親。  どうやら子供は、ドア付近の少し高くなっているつり革につかまりたかったようだ。  ここで妄想が広がるのが私だ。  たいていの私の妄想は、恋愛に関することが多い。  ここからが私の妄想。    結局、つり革につかまることができなかった男の子が私によってきて、「手伝って!」といえば私は彼を持ち上げて支えながら「はい、つかまれたね!」と言っていただろう。  彼を支えたあと、母親から「あら、すいません」などという挨拶をされなが、彼にありがとうの感謝を告げられて終わる。  しかしそれから、その子とは毎日、電車で顔を合わせるようになり、ぎこちない日々が過ぎた10年後、彼が高校生になるころ私に話しかけてきて、「毎朝ずっと一緒ですよね。ずっと前から気になっていました」といいながら電車に揺られて倒れそうになる私をつり革につかまる彼が支えてくれる。    なんてことを妄想しながら、ふと現実にもどるのだ。10年後って、私もう三十代になってそれでもその男の子を思い続けてるなんてイタイ女じゃないか。そもそも5歳くらいの男の子相手に何を妄想しているんだ!と。    でも妄想することは、楽しくてしかたない。カップルをみては、多分彼女の方が彼のこと大好きなんだろうなあ。しかし彼も彼でまんざらでもない様子だからなんだかんだで仲良くなっているんじゃないか頑張れ!という気持ちになる(いったい私はどういう立場で人のことを思っていいるのか些か疑問である)。  そうこうしている間にもう電車が出る時間になりそうだ。さて、今日のテーマは何にしようかしらなどと思いながら私は電車に乗った。席に座るとかばんの中でなるケータイ。スライドしてみてみるとなんと私の好きな彼からの連絡。私の今日のテーマは彼についてで決まりだ。
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