ある噂話

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ある噂話

「田中さん何度言ったらわかるんですか!」 また上司の激が僕に飛んできた。 「すいませんでした。すぐにやり直しいたします。」 背後からクスクスとした笑い声や、「また田中か」といったため息に近いような声も聞こえてくる・・・ 前の会社ではそれなりの地位にいたのだが、この会社に転職してもう1年目になろうというのになかなか仕事がうまくいかず毎日のように上司に頭を下げている。 「気にしないで次頑張ろうよ」 優しく声をかけてくれたのは先輩のケイコさんだ。僕が何か失敗して落ち込んでいる時はいつも優しくフォローしてくれる。 毎回毎回このような調子なので会社からの帰り道は肉体的な疲れと精神的な疲れでいつもヘトヘトになっている。 ただこんな僕にも一つだけ心休まる場所がある。 それは家族だ。 3歳になるかわいい娘。転職する際にも愚痴一つ言わないで支えてくれた優しい妻。今の仕事がうまくいかなくてもこの家族を守りたい一心でまた明日への希望が持てるのだ。ただ、妻と娘の寝顔を見ているとなんだか申し訳ない気持ちになる。
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