第1老い耄れ勇者の隠居譚

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今から75年前、魔王の魔の手により大陸各地で戦火が あがり、人々を苦しめた…その時魔王を倒さんと 立ち上がった…一人の若者がいた…。 勇者「…皆必ず俺が魔王を倒してくるから…待っていてくれよ!」 と意気揚々に声を挙げた若者はそれから行き方知れずとなってしまった… それから75年後…姿を現したり消したりする 魔王を追い続けた勇者ことバーノは95歳の老爺に なっていたが、ようやく魔王の居場所を見つけた のだった… バーノ「…漸く…漸く…魔王の居場所を見つけたわい…長かったのぅ…無茶なクエストで半泣きになりながらも敵を倒して給金を稼いだり、山の中に籠って経験値の高いモンスターを倒したり…ううっ…」 バーノは嗚咽を洩らしながら洞窟の中に入っていった… バーノ「…魔王よ!出て参れ!!勇者のバーノが お主を倒しに参ったぞ!」 シーン… バーノ「あれれれ…? 誰かいないのか…?」 その時、年老いたゴブリンが杖を杖を突きながら 歩いてきた… ゴブリン「どなた様じゃな…旦那様はもういねぇだよ…」 バーノ「は? どういう事じゃな…出かけたのか?」 ゴブリン「…昨日亡くなっちまっただよ、老衰でな…お前様は勇者なんじゃろ?お前様が倒したということにしておこう。」 バーノ「…儂の…儂の75年間は…一体何だったんじゃ…」 ゴブリン「気持ちは分かるわい…魔王様も残念がっておられたよ、勇者に倒される定めであるのに年老いて死んでゆくのは悲しい…とな。」 バーノ「…わしゃこれからどうすればよい? もう身内も生きておらぬだろうし…町の者も代替わりしたりして覚えておらぬだろう…」 ゴブリン「…なら冒険者用の老人ホームにいったらどうじゃ、どうで儂もゴブリンの平均寿命はとっくに過ぎとるからモンスター専門の老人ホームに行かねばならんし…」 バーノ「ならばそこに行くまで一緒に行こうじゃないか、たしか…モルタ王国に専門のがあるらしいから…」 ゴブリン「うむ、人間はそこじゃろうな、モンスターのは山の奥じゃよ、まぁ宜しく頼むよ。」 それから二人は魔王の墓に手を合わせ、山を降りていった…
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