プロローグ

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父の弟が警察に通報してくれたおかげで、父は虐待の罪で逮捕された。 十二歳の冬。 私はようやく地獄の日々から解放された。 「望愛……今まで気付いてやれなくてごめん……」 父の弟の楠柊一朗(クスノキ シュウイチロウ)は、父とは正反対のタイプの人だった。 正義感が強く、面倒見がいい。 痣だらけの私を見て、彼は泣いた。 そのとき私は、大人の男性が泣いている姿を初めて見た。 あの日の彼の涙を、私はきっと一生忘れない。 「望愛。今日から俺と一緒に暮らさないか?」 「……」 「俺は絶対に、君を傷つけたりしない。約束するよ」 この時点で、私は彼のことを信じてはいなかった。 気づけばもう、誰のことも信じられなくなっていた。 施設で暮らす手段もあった。 でも、私は彼と暮らすことになった。 「……迷惑じゃ、ないんですか……?」 「迷惑なわけないだろ!」 迷うことなく即答してくれた彼の姿に、私は胸を打たれた。 信じることは出来なかったけれど、直感でわかった。 この人は、いい大人だと。
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