プロローグ

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…あ、この感じ… 唇が触れた瞬間、 思い出したのは彼とは違うひと。 声には出さなかったはずなのに…… 「…誰と、比べてるの?」 いつもより低い 掠れた声が唇にかかった。 近すぎて焦点が合わなくても、わかる。 彼の濡れた瞳の色が濃くなったのが。 「んっ、……」 さっきとはまるで違う荒々しいキス。 後頭部を押さえつけてぬるりとしたものが入り込んでくる。 苦しいほど抱き締められたまま運ばれて 背中にやわらかな衝撃を感じた。 「余計なことは考えられないようにしてあげるよ」 高い音をたててネクタイを引き抜いた彼は 今まで見たこともない妖艶さで 一瞬でも"彼"に似ているなんて思ったことを 激しく後悔した。
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