【第一部】   第一章   エール国

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 はじまりは南の島。  延々と露店が立ち並ぶバザールの狭間。  背後には美しい白い砂浜。  眩しい朝陽を受け、輝く色とりどりの果実の山々。  溢れる濃厚な甘い匂いに、しばし佇む。  どこからともなく流れる南国の陽気なリズム。  散策する大勢の観光客たちも自然と微笑む。  客を呼び込む売り子の声に心も弾む。  束の間、キューラス島のバカンスを楽しもう。  わたしの足取りは、そよ風に舞う羽毛のよう。  その時、  不意に、わたしは背中を強く押される。  驚きと混乱。  迫る砂の地面。
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