汚部屋

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汚部屋

 弟がこの春から独り暮らしを始めたのだが、その部屋を訪ねて驚いた。  玄関にまで溢れるゴミ、ゴミ、ゴミの山。  実家にいる時、弟はむしろ潔癖なくらいで、自分の部屋はむろん、風呂場やトイレ、リビングなど、家族の共有スペースですら、汚れていると自ら掃除をしていた程だ。その弟がこんな部屋で暮らしているなんて尋常ではない。  どうしてこんなになるまでゴミを放置しているのか。掃除をする気はないのか。  問い詰めても、弟は『なんとなく綺麗にしたい気分じゃない』と言うばかりだ。  すぐに帰るつもりだったけれど、急遽予定を変更し、弟の部屋の大掃除を開始した。  弟は手伝わないけれど、やめろとすら言わない。部屋が片づけられているのをぼんやりと見ているだけだ。  実家にいた頃は、人に自分の物を触られるなんて嫌だと言っていたのに、この変わりようは何なのだろう。独り暮らしが大変で色んなことが面倒になってしまったのだろうか。それとも悪い友達でもできて感化されてしまったのだろうか。  色んなことを考えながら、数時間をかけて弟の部屋を、人が普通に住める程度の空間にした。  弟の部屋はワンルームなので元々泊まる予定はなく、掃除を終えて、私は予約しておいた近くの宿に足を向けた。  一応小奇麗にはしてきたつもりだけれど、まだまだ手を入れたい部分があった。明日もう一度弟の部屋に行き、追加の片づけをしたら、今後は汚さないよう念を押して来よう。  そんな気持ちでその夜は休み、朝もそこそこ早い時間から向かった弟の部屋を見て私は愕然とした。  昨日程ではないが、弟の部屋は一晩でまたとんでもないゴミ部屋に戻ったいたのだ。  いったい何をどうすれば、たった一晩でこうまで部屋を汚せるのか。  弟を強く問い詰めた見たが、いつの間にかこうなったとしか言わない。その態度に嘘をついている様子はなくて、もしかしたら、弟は何かの病気を発病してしまったのではと心配した時、玄関脇に大きめの空き瓶が置かれていることに気がついた。
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