彼女の半分

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彼女は、美しい。 すれ違った者は皆、思わず振り返ってしまう程。その時、控えめに鼻をくすぐる香りにうっとりとする。 彼女はとても、美しい。 透き通るような白い肌に緩やかな弧を描く赤い唇。絹の糸のようにしなやかで真っ直ぐな黒髪。 黒目がちの瞳は夜空の星屑を集めたように輝き、愛らしく奏でる声色に、春の小鳥も共に歌いだす。 当然のようにスタイルもよく、しかし男に媚びるような体つきではない。だからこそ誰もが、その淑やかさに羨望の眼差しを向ける。 友人も多く心も優しい……まるで非の打ち所がない、美しい心の持ち主。 そう、彼女は……美しすぎた。 見た目も中身もあまりに綺麗で。声も性格もあまくて朗らかで。裏も表もなく穏やかに微笑み、時に涙し、失敗しつまづく時すら美しかった。 こんな人間、いるものか。 綺麗なところだけ、純粋で透き通ったところだけを寄せ集めて産まれ、穢れや憎しみ、悪意を知らずに育ち、極めて美しく成長した彼女。 女しかいない、全寮制の少々閉鎖的な空間で、彼女は神々しくもあり……事実この学園の女神だった。
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