三章

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 この日の仕事も脇坂さんと一緒だった。  あれから脇坂さんも作業が出来るようになり俺の負担は減っていたが孝くんと中田さんの話を聞いていた今日の俺は作業は思うように捗(はかど)らない。 「…山田さん何かあったんですか?」 「えっ!?…あっ…ごめんね仕事のスピード遅いよな」  俺は脇坂さんの質問には答えず作業のスピードを上げる気にしてる内容を脇坂さんに伝えると怖がらせるだけなのは明白だ。  だが既に脇坂さんもこの一連の騒動に巻き込まれてる事に気付くことになる。  それは作業道具を片付け終えて部屋を出ようとした時だった。  脇坂さんの可愛らしい悲鳴と共にいきなり抱きつかれたので理由を尋ねると部屋の奥から物音が聞こえたとの事だった。  俺は脇坂さんの言葉で数週間に自分と孝くんが似たようなやり取りをした事を思い出す。 「脇坂さん…抱きつかれたままだと動けないんだけど」  本当はいま直ぐにでもこの仕事を辞めた方がいいと言おうと思ったが確証がなかったので抱きつかれたままの事を指摘すると脇坂さんは慌てて俺から離れたが恐怖心はあるのか暫くは一人で居たくないとの事だったので明るくなるまで事務所に居ることにした。  外が明るくなったので最寄りの駅まで付き添いで送ることにした。 「あっ!?…脇坂さん今日の講義って何時くらいに終わるの…出来れば俺とある所につきあって欲しいんだけど…」 「えっ!?…今日は午前中で終わりますけど…何処に行くんですか?」  数時間前に驚いた場所に行くとは言えなかったので脇坂さんにも関わりがあることかもしれないと伝えて連絡先を交換して脇坂さんを見送った。
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