69人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
小野の腕から逃れて向かい合うと、彼は僕より背が高いので、自然と見上げる形になった。悲しいことに、僕より身長の低い成人男子はそう多くはない。
「祈莉、午前中講義なかったっけ?」
「うん。今日は三限と四限だけ」
「そっか」
「小野は?」
「俺は二、三、四と埋まってる。次の三限、教養だから一緒だよな」
「ああ、うん」
すげー眠い、と心底眠そうに言うので、つい笑ってしまった。
「大教室だからって、油断してるとチェックされるよ」
「あー……、出席と受講態度重視、だっけか」
僕はそういうのは嫌いじゃない方だけれど、たるい、と嫌がる学生も多い。
「……頑張って起きとく。ヤバいとき起こして」
小野は、見た目は少しチャラいが、真面目だ。そうでなかったら、こんな仲よくはなれなかっただろうなと。僕は金に近い茶髪を見上げて思う。
最初のコメントを投稿しよう!