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「いのりさん」
「何?」
「また、うちに来てくれるよね」
「……うん、行くよ」
もやもやした気持ちは、まだなくなってはくれないけれど。僕は、僕の感情から逃げることはできない。向かい合って、受け止めて。前へ、進んでいくしかない。
………………………………
自宅に帰り、誰もいない家の中へ「ただいま」と声をかける。返る声がないことは、初めから、分かっていた。
自分の部屋に入り、上着を脱ぐ。静か過ぎて、鼓動が鮮明に聞こえるような気がした。
正常な、日常。
こんなに、静かだったかな……。
何だか、上手く思い出せない。
今週末には、父も戻ってくる。お金のことはともかく、母がいなくなってしまったことは話さずにはいられないだろう。
彼との関係に、本当に意味はあったんだろうか。お金のことだけなら、他にも手はあったんじゃないのかな。
どうして、僕は。
王様の命令に従い続けているんだろう。
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