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18 才
「えっ!提出、今日までだっけ?」
詩織が笑う。
『またかよ。忘れ物大王だな』
ヒラヒラと進路希望の紙を振る。
「取りに帰る」
『何回目だよ、小学生か』
笑う詩織を突いて教室を出た。まったく情けないよ。
お日様が容赦なく照りつける。
今日も暑くなるんだろうな。教室にクーラーの工事が入るのは夏休み。来年の受験生は快適な中で勉強できるわけだね。
かっこだけ走って戻った下足室に、カオルがいる。
ちょっとドキッとする。
こんなことが前にもあったね。
小5の春。色鉛筆を忘れて取りに帰った私が学校に戻ると、下駄箱の所にクラスメートのカオルがいた。
彼は私が上靴をはき終わるまでそこにいて、私より少し早く教室に戻った。
『なんだ、どこ行ってた?』
担任が言った。
『尿意をもよおしておりました!』
敬礼をしたカオルの大きな声にみんなが笑った。
私はコッソリと自分の席に戻れた。
あれから、カオルは私の気になる存在になったんだ。初恋だったのかもしれない。
「何してんの?」
そう言えるくらいは強くなっている。
『尿意をもよおしたんだ』
スマホを触りながら、彼が言った。
「ここ下足室ですけど」
上履きに履き替えながら応える。
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