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深い眠りから目覚めた時、彼女は見知らぬ部屋の寝台に居た。
木窓が堅く閉ざされた室内は薄暗く、古びた家具が陰となって更に視界を悪くさせている。
困惑しながらも、木綿のシーツの柔らかさを感じながら手探りで寝台を下りた時、不意に部屋の扉が開かれた。
「あれ?魔女さんかと思ったら、知らない子が居るよ」
「本当だ」
「変だな。人間が入り込んだなら俺達が気付かない訳ないのに」
喋りながら中に入って来た複数の影が、彼女を取り囲む。
途端に土や草の濃い臭気が鼻を突き、少女は怪訝な顔で影達を見返した。
「ひょっとして、僕達の事が見えるの?」
すぐ眼前に立った影が訊ねてくる。
「暗いから窓を開けようよ」
別の影が言うなり、数体が窓辺へと駆けて行った。
「……此処は?」
「此処はウルプシュラの森にある、魔女さんのお城だよ」
少女の問いに眼前の影が答えるのと同時に、閉ざされていた木窓が勢い良く開かれる。
少女の不安ごと暗闇を吹き払うかのように、眩い陽射しが一瞬にして室内を明るく染め替えた。
思わず目を眇めながらも彼女が見たのは、子供のような姿形の精霊達の姿で――。
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