私と彼女とあの女

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そして二日後に仕事に行くと竹村さんの隣のベッドが空床になっている事に気がつく。嫌な予感がしてカルテでその患者のカルテを遡ると、昨日亡くなったらしい。もともと心不全で入院いていた高齢のおばあさんだったこともあり亡くなってしまった事に対しては驚いていないが・・・。 頭を過ぎるのはあの女の事。 私がぼーっとしていると、不意に竹村さんが車椅子に乗せられた状態で、ナースステーションへ連れてこられる。 「竹村さん、おはようございます。今からリハビリなんですね」 「・・・」 私が話しかけた声が聞こえていないのか、明後日の方向を向いてニコニコしている彼女。肩を軽く叩いてもう一度声をかけると、笑顔を崩さないままで私の方へ顔を向けた。 「あの人、おいしかったって」 と。それだけ言い残してリハビリに連れていかれた竹村さんを見送りながら、後味の悪さを感じているのは私だけだった。
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