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若の頬に雫が零れ、若が目を見開いた。
立ち上がりそのまま部屋を出て障子を閉めて、その場で障子に背中を持たせかける。
あのまま居たら若をどうにかしてしまいそうだった。
心配してくれた自分の貞操を若のために捨てたと悟られてしまいそうだった。
知られたら若は己を一生許せない心の傷を追うだろう。
知られてはいけない。
それが自分の選んだ道。
若を自分の全身全霊で守る。と。
「……若、」
若には見せられない涙が頬を伝って流れ落ちた。
声を押し殺し明けてく空を睨んだ。
一緒に罪を背負い、同じ世界を生きていく。
誰にも若を傷つけさせたりしない―――
覚悟でもう後ろは振り向かないと決めた。
そう、命尽きるまで―――
【榊のひみつ・完】
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