第四章  桐子の愛

17/17
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
 6・  身籠ってからは、正規の縛りも数倍に強化された。おまけに正智の監視も、四六時中にグレードアップした。  何処にも、出して貰えない。  お母様が車の接触事故が起きた所為で、死産に為り。そのせいで死んでしまった事が、こんな事態の原因らしい。  産婦人科医の診察にまで、正親が付いて来る。  こんなに物凄い籠の鳥に、陽子さんは本気で為りたがっていたのだろうか。また会う事があったら、絶対に聞いてみたいと思っている。  本当に、一人で何処にも行けない。何処に行くにも必ず正規が付いて来る。  「仕事は、如何したの?」  思わず聞いてしまう桐子に、笑って答えた。  「人を使って自分の時間を作るのも、仕事の内だ。君を逃がさないためなら、どんな努力も惜しまないさ」  ついに、正規に捕まってしまった。  正規を愛してはいるが、全く鬱陶しい限り。彼のあまりの溺愛振りに、唯々呆れるばかりだ。これで彼を裏切ったりしたら、きっと命がないと思った。  アレは裏切りを黙って許すような、そんな甘い男じゃ無い。  もっとも・・裏切りを試す勇気など、欠片も無い私だが、「何時かはお母様を見習って、反撃して遣る」、と心に決めている。  夢は、絶対に諦め無い。  必ず何時か大学院に戻って、弁護士にも為って見せる。  【負けないんだからね。フンッ!】
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!