全てを守るための決断

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 急に不安にかられる。  クリスマスも一緒に過ごしたいと思ったのは恋人として当たり前のことだと思っていたし。  まさか……  お嬢様ともなると、そんなものは当たり前の事ではない。……とか? 「……本当ですの?」 「……え?」  悠子さんが何を聞いているのかさっぱりわからなくて頭の中にハテナマークが浮かぶ。 「平日の夜に……」  悠子さんの声音が苦しそうに詰まる。 「悠子と……食事に……?」  ……まさか?  思わず悠子さんの手を握りしめた。 「もっと肩の力を抜いて。  俺は、いつでもあなたに逢いたい。  こうやってずっと触れていたい。」  悠子さんの瞳が潤んでくる。 「何度でも言いますよ。  俺は、あなたが好きだ。  だから、あなたが喜ぶことなら何でもしたい。  恋人になったから義務で一緒に過ごしたいと言ってるわけじゃない。  俺があなたと一緒に居たいんだ。」  悠子さんの唇が何度も震えて、瞳からポロリと涙が零れた。  その温かい涙が悠子さんの手を握る俺の手の甲に落ちた。 「……悠子さんは?」 「煌人さんと一緒に……いたい……」  悠子さんの手が俺の手をグッと握り返してきた。  悠子さんの瞳から零れ落ちる涙を拭う。 「23日は一日身体を空けておきます。  行きたいところ考えておいてください。」  悠子さんに柔らかく微笑んで、悠子さんの柔らかな髪に触れる。  髪で隠れていたピアスがのぞく。  上品にキラリと光るピンクローズ。  何から何まで華やかで……  嫌味がなく上品。  気高く気品に満ちた高貴な薔薇。  本当に美しい。  心の底からそう思って。    俺はこの高貴な薔薇にドンドン溺れていくんだ。    俺はもう……  あなたなしでは生きられない。
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