あなた

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
昼下がり。 黄色い光の差し込むアパートの一室。 太陽と、春と夏のちょうどあいだと、少し、汗かいた匂い。 背の低い冷蔵庫から、ジジジ.....と、音がする。 僕がスーパーで買ってきたアイスを、懸命に、冷やしているんだろう。 彼は窓のそばで、向かい側の家なのか、空なのか、どこか、向こうがわに顔を向けて座っている。 黄色く光る。 僕はぼんやりと、影に映る。 彼は、振り向くだろうか。 黄色く光る、細く、美しい首筋は、僕の方にひねられるだろうか。 黒いTシャツに、下着姿が、よく似合う。 夕暮れ色に光る肌。 「淳也?」 僕の名前を呼ぶ。僕を苦しめる。横顔。 「はい」 「暑いね。アイス食べようか。」 アイス・・・ 一瞬考えて、彼が床に手をつくより前に僕は立ち上がって、冷蔵庫からアイスを取り出し、彼に手渡した。 「・・・うん。はい。」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!