右大臣の娘として。また、左大臣の長男の妻として

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…ただね、側室や妾の方に夫が熱を上げたら、 また、男の子が正妻に生まれなかったら… 側室や妾が、寵愛を受けて正妻の地位が脅かされる。 この点は、覚悟が必要だけれどね。 まぁ、頭中将はあれだけ浮名を流しまくってるくらいだし。 夜の技の方はピカ一でしょう。 体を重ねるのが嫌になるくらい下手くそだったら、 子供を作るのも苦痛でしかないけど、 彼なら、それなりに楽しませてくれるでしょう。 沢山いる女の中で、私に半分も愛情を注いでくれたら、 それで満足するわ。 男の子は産むように私も努めるつもりよ。 私自身の老後の安定の為にね。 初めて夫と対面した時、 不覚にもドキドキときめいてしまったわ。 だって、予想以上に素敵だったから…。 私だって美人の類に入るもの。 これからの結婚生活に少し明るい希望が見えたの。 …もしかして、一緒に生きていく内に「愛」が芽生えるかも! 半分じゃなく、目いっぱい愛し愛されるかも、て…。 でも、それはほんの一瞬で終わっちゃった。 だって彼、明らかに乗り気じゃなかったんだもの。 そりゃ、顔ではニコニコ愛想良くしてたけどね。 目が、哀しそうだったの。 私をしっかりと見てくれない…。 そうよね。私程度の美人、私程度の頭脳や嗜みの女なんて、 腐る程知ってるんだものね。 私の生きる道は、ただ一つ!! 右大臣の娘として、左大臣の長男である夫の妻として! 誇高くお役目を果たすのみ!!! 極上の男の正妻になれたんだもの。 この上「夫から一番に愛されたい」なんて、贅沢よね…。 …夫は、私が注ぐ愛情の半分も、愛してくれないけれど… 幸いな事に夫との間には、長男、次男、長女と子宝にも恵まれたわ。 側室との間に女の子が、 どこの馬の骨とも知れない子の間に女の子が… と、噂で把握してる程度よ。 詳しく知ってしまうと、腹が立ってくるから。 追及するの辞める事にしたの。 夫との間に、男の子二人も産んだんだもの。 正妻としてドーンと構えてないとね。 昔ね…夫が真剣に愛した、身分がよく分からない女がいたの。 常夏の女、とか、夕顔とか呼ばれてたけれど。 何故知ってるかって? 夫はいつも、私との夜の行為の時、 私を通して他の女を見てたからよ。 …本気でその女を愛してる…直感したわ! …やっぱり、私程度の女じゃ、満足できないのね… 悔しくて悲しくて、涙が溢れたわ。
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