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「信吾くん、今日はお仕事中なんだ」
「ああ、まあ。……どうした? あれから、またなにかあったか?」
去年の秋、信吾とせな、綾火、瑞樹そして栄の金持ちの息子金森大輔は五人で大須オーガニックドールズのメンバーにいやがらせをするストーカー(?)を捕まえた。信吾が中心となったこの作戦に、おとりとして全面的に協力したのが、このビッチアイドル紗枝香なのだ。
「ううん、そういうことじゃなくって」
信吾は意外そうな顔をした。
「うちで買い物?」
紗枝香は上目使いで含み笑いをした。
「信吾くん、お祖父さんから、なにか預かってない?」
「え? あ」
ごそごそとレジ台のしたに頭をつっこんで、紙袋をひっぱりだした。中には、この古着屋に持ち込まれた服のなかから礼之介が厳選した何点かの洋服がつまっている。
「ひょっとして、これか?」
紗枝香は、手をのばして紙袋の中をのぞいて嬉しげにうなずく。
へえ、と信吾が感心した声をあげた。
「アパレル関係の仕事めざして勉強してる子がいるから、わたしてやってくれって……あんたなのか」
「私いったでしょ。ロコドルのオーガニックドールズなんて、ただの踏み台だって。有名になって将来、自分のブランドたちあげるのが夢だって」
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