ノーマ・ジーンの初恋

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ノーマ・ジーンの初恋

 オフショルダーのセーターに、マイクロミニのスカート。歩くたびに太股の外側に垂らしたガーターベルトが揺れる。フェイクファーのブーティーからからすっとのびる自慢の脚は、もちろん生足。とめるストッキングのないガーターが、所在なさそうにちらちらと動いている。  神島紗枝香、ご当地アイドル「大須オーガニックドールズ」のひとりだ。まだ素人っぽい雰囲気の少女もいるなかで、ルックスは文句なしにあか抜けている。が、この街のアイドルオタクたちからは、残念なふたつ名を頂戴している。 「ビッチアイドル紗枝香」  男性の視線を意識しすぎたサービス過剰なファッションと、奔放な交際関係が、彼女のアイドルとしての人気に影を落としている。  そんな風評ももちろん本人の耳に入っているのだが。当人は、今日も変わらず細い肩とすんなりした脚を、世間のつめたい風に惜しげもなくさらしている。  もの憂い動作で金色の髪をかきあげる。周囲を歩く男たちに自分が盗み見られているのを知っているかのように。それは蝶々が羽を開いたり閉じたりして、羽の模様をよく見せる様子によく似ていた。
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