天国に一番近い海

1/3
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

天国に一番近い海

親がわりになって育ててくれた祖父が亡くなって、半年ほど経ったころ。 こんな夢を見た。 夢だということは、わかっていた。 僕の見る夢のほとんどは、明晰夢というやつだ。 つまり、これは夢だぞと、自覚しながら見る夢のこと。 バスに乗って、僕は、どこかへ向かっていた。 新緑の萌える山道をバスは走る。 バスは満席。 みんな、のんびり、くつろいでる。 まもなく、外の景色が変わった。 海だ。海が見える! うわぁ、なんてキレイな海なんだ。 どこのパラダイスだ? まるで南国の旅行パンフレットの表紙をかざる写真のようだ。 みごとなまでに透き通る、エメラルドグリーンの海ーー さんさんと、ふりそそぐ陽光のなか、僕はバスをおりた。 すると、そこに立っている人が、こっちに向かって手をふった。 祖父だ。 「おお、かーくん。よく来たな」 「わーい。じいちゃん。元気だったー?」 元気かも何も死んでるのだが。 夢のなかでは、それをふしぎと思う認識はない。 「おお、元気だぞぉ。このとおり」 たしかに、どこから、どう見ても元気そのものだ。 「いいとこだねぇ。ここ」 「そうだろ? さっ、かーくん。おいで。サザエのつぼ焼き食わんか?」 「うん。食う!」 そこは海水浴場のようだ。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!