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「仲良しだから離れたくなくて一緒に住んでるってこと?」
直哉はうんとうなずくと、困った顔で俺を見上げた。俺は直哉の横にしゃがんでいった。
「俺たち、高校の時からの大親友なんだ。お互いとても頼りにしていて、一緒にいないと困ることがたくさんある。だから一緒に暮らしてるんだよ」
ハルトはチラッと俺を見ると、浅くうなずいてうつむいた。手にしていた文庫本をパラパラとしながら、ぽつぽつと話し出す。
「うちはお父さんとお母さん、別々に暮らしてる。別々に暮らしたほうが、仲良くできるんだってお母さんがいってた」
直哉が焦るようにいった。
「そうなんだ。ぼくらは友達同士だから結婚生活のことはよくわからないけど、きみのお母さんがそういったのなら、そういうこともあるのかもしれないね。きみのお母さんは別に嘘はついてないと思うよ」
ハルトは浅くうなずいて続けた。
「前はね、一ヶ月に一度お父さんと会ってたんだ。お父さんとお母さんと三人でユニバーサルへ行ったり、ひらぱーにいったりするの。その時はお父さんもお母さんもすごく仲良しで、ぼくは毎月その日を楽しみにしてたんだ。でも今はお父さんに会えなくなっちゃった」
胸がどきりとした。俺は家族と離れて暮らしたり、会えなくなったことがないので、この少年がどのようにしてその事実を受け止めているのか推し量ることができず、ただただ可哀想としか思えなかった。ハルトは顔を上げて直哉を見つめた。
「ねえ、きぬがわさん知ってる?心も風邪をひいてしまうことがあるんだって。お母さんがいってた。お父さんは心の風邪がひどくなったから、入院してるんだって」
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