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モーターは唸り声を上げながら、ボートを沖へ、沖へと運んでいく。 強風で髪は乱れ、顔に細かく当たる水しぶきに目を細める。 操舵席の背中に目を向ける。 「連絡くれれば用意しておいたのに」 そう言って、驚いたような、呆れたような表情を浮かべながらも、理由は聞かずボートを出してくれた。 振り向くと、灰色の空を映し出す海面の向こうで、船着き場が糸で引かれる様に後退していくのが見える。 顔が徐々に強張っていく。 故郷の海を前に緊張していることに、ふと笑い出しそうになったが、すぐまた顔は強張っていった。 わたしは、今から、昔のわたしに会いに行く。 海の底に閉じ込められた、あの頃のわたしに……。
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