第3章 大人って淋しい金魚みたい

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ブルーベリーに水をあげないと。 パパは話してくれた。ブルーベリーには♂と♀があって、風や蜂の受粉だけでは足りない時があるんですって。だから、時々、私が軽く揺さぶるのよ。 私は、実がついたと時のまだ硬いままのものが好きよ。 左手に少し摘んで、池に近づくの。 ねぇ、大人って、淋しい金魚じゃなくて? あら、私が来たから金魚がエサを貰えると思って近づいてきちゃったわ。 透明でもない池を覗くと私がうつってるの。 鏡じゃないから。私がはっきりと見えないのよね。 水の中に手を入れて、金魚を捕まえてみようとしても逃げちゃうの。 悔しがって何度か試す私をね、葉っぱの上の蛙さんが笑うのよ。 いいわ。 「こんにちは、蛙さん。私の手の上に、お乗りなさいな。」 ねぇ、私。私は・・・水に浮かぶ蓮の花みたいでしょ。 下からね、白や赤の金魚達がつつくのよ。 淋しい金魚につつかれて、蓮がユラユラ ユラユラと。 ほら、揺れてるでしょ。 愛人はね、私のことを「青い果実」だなんえ言うの。悔しいけど、あなた達みたいな「淋しい金魚」でもないから、そうね、だから・・・lotusなのよね。 あら、いけない! ブルーベリーを下手にかんじゃって、口が汚れてしまったみたいだわ。 パパがくれた汕頭のハンカチで拭いちゃえ。 ・・・・・・・ 文化人類学の後、専門科目に出て、その後わたしは図書館で10分程眠っていたらしい。 ノートに書いた文字がミミズのようになっている。 時計を見ると午後5時を過ぎていた。 そろそろ帰宅して「パパ」の家に行く準備をしないといけない。 今日も「パパ」がいないといいのだけれど・・・。
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