第2章 王都編 第34話

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「たく、お前さんには俺の企みを潰されて、こっちの計画はパーになっちまったぜ。」  ジャックは竜人の方を睨み付けた。 「企みって孤児院の件ですか?」 「そうだよ!」  そう言うと店員が持ってきたお代わりをまた半分ほど飲み干す。 「一体孤児院をどうするつもりだったんですか?」  竜人の問いに、しばらくエールを見つめていたジャックは語り始めた。 「俺とステラの父親、そして母親の三人は幼馴染の関係だったんだ。珍しくもない一人の女に二人の男が惚れるというよくある話だ。」 「俺とあいつの親父は性格は正反対だったが妙に馬が合ってな。三人でよくつるんで遊んでいたものだ。お互いに同じ女に惚れていることは察していたが、暗黙の了解ってやつで告白することはしなかった。」  ジャックは残っていたエールを飲み干す。 「ところが俺達が二十歳の頃、彼女は病に倒れちまった。医者の見立てではそう長くは生きられないと宣告された。あいつの親父は俺のところに来て、彼女に告白することを告げてきた。俺はなにも言えなかった。彼女の死を受け入れることができずに逃げちまったんだ。そして俺は組織の仕事をがむしゃらにこなすようになった。そうすることでなにも考えずにいられたからな。」  ジャックは別の酒を店員に注文する。     
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