第2章 王都編 第34話

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「そんなある日、彼女の死の報せが入って来た。俺が久しぶりにみた彼女は、もう笑うことも話し掛けることもしてくれなかった。俺はその時、初めて自分のしたことを後悔した。何であの時彼女から逃げ出してしまったのか、何で自分の想いを伝えなかったのか。だが今さら後悔したところで取り返しのつくことじゃなかった。」 「その時、彼女が眠っている傍らにはまだ小さい子どもがいたんだ。彼女の面影を強く受け継いで、嫌でも昔を思い出させるほどにな。そして葬儀が終わってからしばらくたった頃、あいつの親父は孤児院を始め身寄りのない子どもたちを受け入れていった。まるで使命みたいに、どんなに無理をしてでも行き場のない子どもたちは受け入れていた。そんな事をすれば当然借金はどんどん増えていった。」 「俺は何度も孤児院の閉鎖か、せめてこれ以上の孤児の受け入れを止めるよう説得したが、奴は受け入れなかった。このままじゃ彼女の忘れ形見まで失うはめになると思って、奴の借金の肩代わりをしたのさ。勿論、組織の金じゃなく自分の金でな。だから、本当なら金なんて返ってこなくても良かったんだ。これは俺の贖罪に過ぎなかったからな。」  竜人はジャックの話をただ黙って聞いていた。     
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