4.自由を求めて

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「な、なんだ・・・?」  X氏は顔色を変えた。頑丈で壊れるはずがない灰色の鎖。それが、小刻みに震えだしたのを見て。 (鎖が小刻みに揺れている。何故だ。いったい、何を?)  X氏は知らなかった。キャロンが履いているネロからもらったロングブーツ。それに施されていた装飾。それは、前の世界でのことサイド国に暮らしていた装飾の魔女こと、時空の放浪者であるジュエリの作品の一つであった。 「私はネロ様と幸せなハッピーエンドを掴む為に!私は戦う!」  キャロンが叫んだ直後だ。ロングブーツに填められた、願いを叶える装飾がその力を発揮した。他でもない。現在、自分を履いている彼女の純粋な願いを聞き入れ。  キャロンの願い。それは、『ネロを護れること。二度と負けないように護れる力を』。 (バカな・・・!)  X氏は目を見張った。キャロンの周囲に二枚の板のようなものが出現したことに。それの一枚にはキャロンがいつも海姫に変身する際に使用していた錨のアクセサリーがデザインとして施されていた。  その二枚の板はキャロンの両足にあった。丁度、それはキャロンが大砲の能力を使うのに適した台であるかのように。キャノンは力を振り絞り、足を振って、その板に踵を叩き付けた。  瞬間、爆発が引き起こされ、X氏から周囲の視界を奪う形となった。 「しまった!」  周囲を爆破し鎖を壊すつもりなのか。ならば、次の手を打ち出すまで。 「深緑の森(ディープグリーン・フォレスト)」  周囲に深緑色を使い青々とした木々が生い茂る森を描く。一瞬にして、描かれた木々は全て具現化しX氏の周囲を覆い隠し護る。確実に自分を狙えるようにする為には、上空から狙う他に方法はない。  上空から狙い撃ってきた時こそ、再び拘束するチャンス。今度は灰色の鎖で縛るだけではダメだ。少々、痛めつけてから束縛するしかない。  空からの攻撃に備え、X氏は迎撃できるよう色を使い態勢を整え、真っ白な空に狙いを定める。  ところが、いつまで待ってもキャロンは姿を現そうとしなかった。密集している木々を蹴りで壊しながら向かってきているのか。いや、それならば、木々が爆破される音が聞こえるはずだ。だが、それらは聞こえることはなく、静かなまま。
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