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現代
村からどうやって娘が選ばれたのかの記録は残っていない。
ただ、「美しく優しい申し分のない娘が選ばれた」ということだけが口伝として残されていた。
人柱を埋めた後は、工事は何事もなかったのように着々と進み。
川のような入江の真ん中にあった小さな松島を経由して、両方の集落むすぶ、緩やかな放物線を描いた木造の橋が架けられた記録がその絵図とともに残されている。
明治初期の写真には、橋の上を行き来する人らとともに、その姿を残している。
その後、その木造の橋は何度か架け替えられ、21世紀の今はコンクリート製の、両側に街灯も灯る美しいアーチ橋として姿を変えている。
その橋の名前にのみ、当時の面影を残すのみとなっているのだ。
橋の名前は「弁天」
そうあの、女神の名前だ。
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