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初恋の相手
私には、初恋をした人がいる。
今はいない。
でも、してしまったこの思いは変わらない。
会えたら、逢えたらなんて素敵な事だと思う。
でも、今はいない人で一般の人みたいに直ぐは会えないし話せない相手だ。
私からしたらその人は芸能人ともいえる。
その人は、偉大な人だと私は思う。
季節は夏。
私の家の近くに海が広がっていた。
いつも勉強や友人、親に腹が立った時とか嫌に自棄になった時に、私は海に出向く。
足をいれて、漣が立つのが見てて好きで、とても良い気分になる。
いつか、初恋の人に逢えたら、どれだけ嬉しくて、良い事だろうか。
不意に、ぶわっ、と風が吹き荒れた。
私は前のめりに倒れて、そのまま波に吸い込まれた。
*
「異国人か?」
「さぁ?土方さん、突いてみてくださいよ」
「はぁ!?なんで俺が!」
「まぁ良いじゃないが歳、少し反応を見てくれ」
「……ったく、近藤さんが言うなら……」
土方さん……?
近藤さん……?
あれ、なんで私、幕末にいるの……?
「あ。近藤さん近藤さん!目覚ましたみたい!」
「ああ、そのようだな」
「おい、名前は?」
この声は、さっき聞いた……土方さん、かな。
「……あ、名前……?」
「ねぇねぇ、日本人だよこの子」
「なんだと?」
「自分の事分かるかね?」
「……し、おん、です」
「しおんちゃんかあ、よろしくね」
一人だけ名前が分からない、その人が手を差し伸べる。
私はその人の手を握った。その途端、ぶわっと記憶が甦る。私の知らない記憶。
――前世……?
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