序章

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『ダァ!シエリイェス!シエリイェス!』 世間的には帰省ラッシュのピークと言われる、この四連休、一日目。 10月23日、都市ラウンジの中央区、交通の網で敷き詰められているこの町にて、 その列車は動きだそうとしていた。 都会の喧噪から離れるべく旅にでる若者から、 実家に帰って、のんびりとするつもりの一家まで、それは多彩だった。 オオカミ鉄道のそれが着駅はひとつ、VIPだけである。 ラウンジとVIPを繋ぐ線路、それは駅が二つだけしかない、 言わば交通としてより一方的な移動を目的とした移動手段である。 ラウンジには様々な交通手段が設けられているが、行き着く先のVIPではそうも行かず、 着く、VIPの南区ではバスやタクシーが多いだけで、このオオカミ鉄道以外の電車は、ない。 つまり、乗る人は皆、VIPに行く、と限られる。 そう、私もだ。 (゚、゚;トソン「待ってください、待って!」 『ダァ!シエリイェス!シエリイェス!』 . 11 名前: ◆wPvTfIHSQ6 :2011/08/27(土) 14:17:56.77 ID:9bUqTpSi0   私の場合、帰省というより親の実家に遊びに行くのが目的なのだが、 親が不都合故に、単身で乗り込むことになる。 もともと時間にルーズな私が、定刻通りに列車に乗れるわけもない、 だから今もこうして走っている。 (゚、゚;トソン「駆け込み乗車はァァ!」 (゚ー゚;トソン≡「やっちゃだめぇぇぇぇ!!」 列車の、開いている扉にヘッドスライディングし、それと同時に扉は閉まった。 額を強く打ち、思わずそこを手で押さえる。 血は出ていないにせよ、この打撲だと内出血がひどそうで、少しの間目の前が眩んでいた。 列車が少しずつ動きだし、それに伴って身体も揺れ、後頭部で束ねていた髪も同じく揺れた。 それを脳で理解できる頃には、痛みは、少しだがひいていて、 それよりも、いつまでもこうしていると、誰かに見つかって、怒られそうだったので立った。 しかしひどい痛みだ、立ち眩みを起こした。 手すりを掴み、ゆらりゆらりと歩き出す。 .
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