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1.
目が覚めると、眼前には知らない天井。
見慣れた自宅の天井に似た、木製の天井だ。木目が綺麗に並び、なかなかいい味をだしている。
「あ、お姉ちゃん! 目、覚ましたよ!」
近くで少女の声がした。スタスタと足音が続き、ギイィとドアが軋み開けられる。
その少女は廊下であろう場所で騒ぎ回り、その煩さで眠気は退散していった。
少し苛立つ。
「もう暫く寝させてくれぇ・・・・」
そう呟き、寝返りをうつ。
うっすら開けられた視界に白い壁が映りこむ。これといって特徴のない、白い壁。
「ルネリア、静かにしなさい。あまりに騒がしいと迷惑でしょ」
先程の少女と異なる大人びた声が聞こえた。
軽く叱られ、ハッと両手で口を塞いだ。しかし、時すでに遅し。
それに気が付き、「ごめんなさい」と絞り出すように謝った。
「次は気を付けるのよ」
優しく言うと、「はーい」と元気な返事。これは聞いていて快い気分だ。
そして二つの足音が部屋に入り、ドアを閉める。
そしてこちらへ歩み寄ってくる。
「うちの子が失礼しました。どこか調子の悪いところはありませんか?」
「いや、特にはないな。もともと調子の悪いところはないし」
そう答え、気怠い体を頑張り起こす。
流石に調子も悪くないのに、寝たままなのは不味いだろう。
寝起きの気怠さは残っているが、これは毎朝のことだ。
そして俺が寝ていたベッドの隣に、二人の人物が立っていた。
一人は少女。おおよそ七歳だろう。ツヤのあるグレーの髪の下には、つぶらな瞳。向けてくる笑顔は天使の如く可愛らしい。幼女趣味はないが、頬ずりしたくなるほどだ。
もう一人は俺より若干年下、恐らく十七、八と言ったところだ。麦色の髪は背中まで伸び、それを後ろで束ねている。いわゆるポニーテールというやつだ。端正な顔立ちには、拭いきれない心配さが見受けられる。
「 申し遅れましたが、私はティアーネ。この子はルネリア。ここは孤児院の一室です」
「孤児院、か。ここにはルネリアのような子は何人いる?」
疑問を口にし、後悔した。二人の顔が翳り、何か思い出したくない何かがある事を無言で告げてくる。
「す、すまん・・・・。今のは忘れてくれ」
申し訳なく思い、出てきた声はあまりにも弱々しかった。
重い空気がさらに重くなり、のしかかって来るように感じた。
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