M君に起きた本当の話

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「なんだよ。ノリ悪いな。サッカーでもしようぜ」  M君の言葉に、友人達は青ざめた顔で訴えた。 「何言ってんだよM!なんだよアレ!」 「はぁ?」 「はぁ? じゃねぇよ!ち、血だらけの生首だったろ!お前が蹴ってきたの!!」  生首?  そんなワケがない。  あれはサッカーボールだった。  M君がそう抗議しても、みんなは半泣きになって「人の首だった」「血だらけでこっちを睨んでいた」と喚き叫ぶ。  それなら確かめてみようと度胸のある数人を従え、ボールが転がっていった植込みの中を探索したが、いくら探してもボールは見つからなかった。  M君は内心『きっと俺を怖がらせようとみんなで相談したんだな。手の込んだイタズラだ』などと思っていたが、ふと自分の自転車のカゴを見て凍りついた。  べっとりと濡れた髪の束が、カゴの網にぎっちりと巻きついていたからである。 「ぎゃぁぁぁーっっ!!」  恐怖のあまり、M君は皆と一緒に、自転車をそのままにして家へと逃げ帰ってしまった。  翌日、高校生の兄に頼み込んで、一緒に公園へ自転車を取りに行ってもらうと、カゴの中にはもう何もなかった。  それでも、ボールを手にした時の妙な重みは、いつまでも忘れる事ができなかったという。
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