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 それから月日は流れ、今日は二人にとって大切な日。結婚式だ。 「おめでとう!!」  この声に包まれる二人は、真っ白な綺麗な衣装を着ている。  あれから、会社はやむをえず倒産となってしまった。弥美彦にとっての苦渋の決断だったが、社員を泥船に乗させるより、早く解放してあげるべきだという結論に家族で至った。始めは変わった父母だと思っていたが、そこはさすが経営者。考えがしっかりとしている。  今まで親のすねをかじっているも同然だった弥美彦も、このままではいけないと資格を取っている真っ最中。志保は、変わらず婚活中だが、最近良い人が出来たらしい。  中でも、弥美彦の父の再就職先が決まったことは救いか。  いや、そうでないにしても、この先希望は幾らでもあるのだ。この、結婚式のように。  二人はお互いに顔を向かい合い、ベールに包まれた可乃子を見る。  髪を上げられ、ドレスに身を包んだ可乃子の美しさから、思わず弥美彦ははにかんだ。それを神父は微笑ましそうに見つめながら、お決まりの言葉を使う。 「あなたは、可乃子さんを。健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか?」 「はい」  出会ってすぐすれ違い、仕事の危機にあい、元カレにさらわれた。全く、目まぐるしい日々だった  けれど、それもこれも乗り越えられたのは、可乃子を常人以上の愛で包んでくれた、弥美彦のお陰なのだろう。  健康な時も病の時も、勿論富める時も貧しい時も良い時も悪い時だって愛し抜ける。私達なら。 「誓いますか?」 「はい!!」  神父の問いに、可乃子は元気よく答え、弥美彦に口づけをした。 「か、可乃子、早いって!!」  照れながら一歩下がる弥美彦。ハッとした可乃子は、苦笑いしてすみませんと神父に謝る。会場からは笑いがこぼれた。 「いえ、良いですよ。それじゃあ指輪を交換して、改めて誓いのキスを」  二人は指輪を交換し、改めて口づけを交わした。 (了)
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