三羽のちょうちょ

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 “太陽と月の一千一百一会の刻、闇より双極の救世の使者出で、人形の民すべからく救われん。” ニンケイの民に古くから伝わっている伝承の時は、ちょうどその時を迎えた。 今日は、伝承の日を記念するコント王国とザント帝国両国にまたがる盛大な祭典が開かれていたのだ。 ふだんは国交が断絶している両国間を、蒸気地下鉄が白い煙をまき散らしながら行き来している。  コント王国とザント帝国のちょうど真ん中にぽつんと浮かぶどこの国にも属していない土地、ニンケイの街も、ふだんとは違い多くの人々でにぎわっている。 いつもは、呪われた民として人々から忌みきらわれているニンケイの民たちだったが、今回のお祭りの主役となれば、人々はふだんの確執もころっと忘れて私たちニンケイの民たちに笑顔を振りまいていたのだった。 酸性雨が降りしきる灰色のニンケイの街の地下は、今日はとてもカラフルに彩られていた。 ニンケイの子どもたちが、竜や一角獣、空クジラや火の鳥のかっこうに変身して、仮装行列のパレードをしていると、赤・青・黄・水・緑・桃・紫の七色の風船が地下空間をふわふわといっせいにただよいはじめた。
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