第1章 地下鉄での出会い

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昭和55年12月30日 もうすぐ夜0時を超え 中津行き地下鉄の終電がホームに入ってくる。 君に会うため、この地下鉄に乗ろうと梅田駅にいた。 ーもうすぐ君に会える。 心がどきどきと高鳴り、顔が高揚してくるのがわかる。 ー 結愛、君はお酒を沢山飲んで、酔いつぶれているだろうな。 彼女は残業続きで会社の忘年会でたくさん飲みすぎた上に、地下鉄に揺られて乗っているはずだ。体調は最悪だと思うが初めて会うことを考えると、つい顔が緩んでくる。 ー結愛 結愛の名前を何ども繰り返している俺は、紺のジャケットに深緑の綿パンを履き、黒い鞄をさげていた。 この黒い鞄にはいつもは楽譜をいれているが今は違うものを入れていた。その鞄の中を確認した。 500mlの水入りペットボトル。 ゲロを吐くためのビニール袋。 それから飲み過ぎの消化薬。そしてタオル。 準備はこんなところでいいだろうか。 とにかく次にくる最終の地下鉄に乗らなければならない。 鞄の中身を確認した後、鞄に触れる手に力をこめ駅のホームで白線の内側で列車を待った。 ガタンゴトンと速度を緩めながらホームに入ってきた電車は、キキッーと緩やかな音をたて、俺の前で止まった。 ドアが開いたので俺はそれに飛び乗った。
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