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サラは一人ではなかった。若い男三人と楽しそうに話をしていたのだ。瞬間、アスタのこめかみが引きつる。――俺のところに来ないで随分楽しそうだな、おい。
すると、サラの方が気づいてアスタのもとに駆けよってくる。
「アスタ?どうしたの?」
文句の一つも言いたくなったが、彼はぐっと堪えて笑顔を見せた。
「別に。うろうろしてたら、サラを見つけたから」
「また抜け出したの?」
「休憩ですーーー」
呆れたように言うサラに、アスタは唇を尖らせる。また文句を言われる前に訊ねた。
「サラは?今なにしてんの?」
「今日は社交ダンス。今まで一人でやってたんだけど、今日からカップル練習になったの」
そう言って、サラは彼らの方を振り返る。男性陣三人はアスタの存在に気づいており、ぺこりと頭を下げた。サラは当然のことのように言ったが、アスタは彼女の言葉に、思わず口が開いた。
「か、カップル練習って、今日やるって知ってたんだよな?」
「うん」
「なんで俺に声かけなかったんだよ!?」
彼女の返事にアスタは詰め寄る。サラは驚いて一歩下がった。
サラは当然、俺が踊れるのを知ってる。しかも、この城で社交ダンスを教えるなら、その人物は決まってる。講師は同じ。それにもかかわらず声をかけてこなかった。……ってか他の男と踊るとか許可してねェぞ!?
鼻息荒く問うアスタ。サラは困った顔でうつむいた。
「だって――」
「だって?」
視線を彷徨わせた後、彼女は言った。
「…………アスタとは一緒にしたくない」
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