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試すような視線が面白くなくて、皮肉を込めて続きを言ってやった私。
高柳は「ハハッ」と笑うと、頬杖を止めて私の方に半身を向けた。
「まさか。凛子さんという人がいてくれたおかげで今の私があるというのに。捨てるはずないでしょう。私にはあなたがいなければ未来はないが、あなたは私がいなくても幸せな余生を過ごせると思いますが」
高柳が言うのは、社会的な立場の話の幸せのことだろう。
三並家に籍がある以上、よほどのことがない限り金や生活、仕事に困ることはない。
高柳にとってはそれは全てかもしれない。
でも、私はそれとは違う種類の幸せもあるんじゃないかと、昔は信じていた。
だからこそ、自分だけを求めてくれる人をなにも疑わず想い続けたんだ。
藤堂という男を。
「家がお金持ちだからって、生まれてからずっと幸せとは限らないわよ」
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