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藤枝は顔を離し俺の手を両手で包み込んだ。
「それで、小山内さんのお返事は?」
少し上気した頬。まつ毛の揺れる丸い瞳。
ぽってりと色付く唇。
毎日顔を付き合わせ、一つ言えば十のことが返ってくる、仕事のできる彼女。
俺は片眉を吊り上げて言う。
「俺、おっさんだぜ?」
「知ってます」
「仕事第一人間だし」
「それも知ってます」
「オヤジ臭とか……」
藤枝はぷっと吹き出す。
「ふふふ。大人のフェロモンってことにしときます」
「本当に良いのか?」
包まれた手を動かし、反対に指を絡め取った。藤枝は顎を持ち上げ、俺の指を握り返す。そして顎を持ち上げ、真っ直ぐ俺の目を見つめてきた。
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