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ある天使の記憶より
ーカタカタカタカタカー
「現存数は?」
「300造ったクローン体のうち、Ⅳ段階まで到達した個体は48」
「50を切ったか」
「はい、チーフ。過去と同じペースなら、ここから各段階を経るごとに生存個体は半減。最終段階、までにすべて死滅します」
「何故うまくいかない。人工羊水の配合も、何百と試しているのに」
「…いっそ、人間の女の腹に入れますかぁ?」
「流石に許可は下りないだろう、どんな副作用が起きるか分かったものじゃない」
「非人道的、ってやつですね。分かってますって主任サマ。希望的観測ってやつですよ」
「希望の意味が違う」
「私としては、同じクローンにも関わらず、何故翼の生える位置がこうも個体ごとに違うのかが疑問です」
ーカタカタカタカタカター
「そこは同意。正しくは『翼に似た器官』ですけが…ルシフェルの翼は背中からの一対。にも関わらずクローン達の羽は必ずしも背ではない」
「背中に一対が一番スタンダードですけどね」
「だが背に始まり、腰・頭部・耳・眼球・足・腕…体のいたるところから生えてしまう」
「色もぐちゃぐちゃ。眼球や耳から羽が生えた個体をいくつか解剖しましたが、聴覚や視覚に問題がありそうなのばっかでしたよ?もちろん正常な場合もありましが」
「数もな」
「キリスト教に則って言うなら、多翼は上級階級の証とされています。ルシフェルが仮に本当の天使だとして、下級の階級の天使から、上級のクローンが生まれることがあるのでしょうか、疑念です」
「ええ?でっもー、人間だってスラム街生まれから国の王に成り上がる場合あるし」
「天使は人間ではない」
「天使は天使かすら不明、でしょ?主任様」
「…」
「でも天使は天使です」
「そういうことにしないと研究費出ませんしね」
「一体でもクローン化に成功すれば分かるさ。その最初の個体が凶暴で攻撃的であれば悪魔としてもいい。温厚で誠実であれば、天使のまま通せばいい」
「悪魔だろーが天使だろーが、加工して人間サマが使役すれば金にはなるし人間の利益につながるってことで…どっちが悪魔なんだか」
「知恵の実が文字通り知恵の実で、知識が『罪』というなら、我々研究者とは凝縮された罪の化身だ。何を迷うことがある」
「迷ってなんかいませんよ、楽しそうだなーって思ってるだけです」
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