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吾輩は『吾輩は本である』という本である。
名前は今書いた。
今日も静かに開店を待つ。しかし、閉店から開店まではとにかく暇である。
世間では何が起こっているのかよく分からないが、外の世界に思いを馳せながら、毎日開店を待っている。
そろそろ、店長が……。
カチッと音がして男が入ってきた。
来た。何だか、浮かない顔をしている。昨日飲み過ぎたのか?
照明が一気につけられた。店長の浮かない顔が余計に際立つ。
「はぁ~。」
ため息までついて。彼女にでもフラれたか?いや、そもそも彼女なんていたのか?まあ原因は何にしろ、お客さんの前でそういう表情はやめてもらいたいものだ。
10分後、今度は女の子が入ってきた。先程店長が開けた入り口の鍵をかける。
「おはよーございまーす。」
元気よくバイトの美奈ちゃんが入ってきた。
「あれ~?店長、どうしたんですか~?ヒドイ顔してますよ?」
「う、うん。」
何だ、歯切れが悪いぞ。
「彼女にでもフラれたんですか~?」
「いや。ただ飲み過ぎただけだよ。」
たぶん、嘘だ。
「ふーん。」
美奈ちゃんは、納得いかない顔をしながらも、それ以上追求せずに、道路に面したガラスを拭きに行った。
「はぁ~。」
またため息。気になるではないか。元気だけが取り柄なのに。あ、これは失礼か。とにかく、早く元気になってもらわねば。
「店長~拭き終わりましたよ-。」
「ごくろーさん。」
「入り口開けていいですか?」
「いいよー。」
カチッと音がして、入り口が解錠される。
今日も1日が始まる。
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