1・まさかの救世主

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宝珠は、ゲーム内で使える武器や防具のガチャを引くお金の様なもんだ 無課金主義の俺には痛い出費だが、ここで健の機嫌を取っておかないと、これから手強いクエストを手伝ってくれなくなる 嬉しそうな健とは反対に、俺は小遣いが減ると思うとはぁ~と溜め息をついた そんなくだらない話をしつつ… 学校へ行くためになんとなく歩き出した俺達の後ろで、甲高い歓声が上がって思わずそちらを振り返る 「……出た…ウチの学校のアイドル……水無瀬は今日も朝からモテモテだねぇ…」 俺と同じく振り返っていた健が、女子の中心にいる人物を見て引きつった笑みを浮かべながら皮肉を漏らす 女子に囲まれて楽しげにしているのは 水無瀬 秀(みなせ しゅう)   俺と同学年だがクラスは違う 俺と似ているその名前もなんの嫌みだろうか……向こうは秀という名前を具現化した様な奴だ 頭も顔も何もかもずば抜けて秀でている 誰にでも優しくて人当たりもいい もっと言うなら俺とは住む世界が全然違う 携帯を囲んでる女子に見せて、爽やかに笑う水無瀬に俺は背を向けて歩き出した 「おいヒデ?……どうした?」 「水無瀬がモテてるのなんていつもの事だろ…学校行こうぜ」 スタスタと歩く俺に健が「そういえば…」と首を傾げる 「……お前さ、春くらいに掃除の時間だっけ?水無瀬に助けてもらわなかった?……ほら、1年が鉢植え落としてさー」 健が言いたいのは、2年に上がってすぐの掃除の時間の事だろう 玄関掃除をしていた俺の頭上に、3階のベランダから鉢植えが落ちてきたのだ あまりにも突然の出来事に、周囲の悲鳴や動揺を余所に全く動けなかった俺を、近くにたまたまいた水無瀬が腕を引っ張って助けてくれた事がある でもそれだけだ いや…俺が女子ならそりゃときめいただろう 恋の始まりのきっかけにもなったろうさ でも、俺は男だ…そんな展開になどなるはずもない
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