目隠しの女神

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 相談者のうちのほんの一人を捌いた後の雇い主のために、熱々のコーヒーを持って行った。  当然のように中川さんも一緒だ。自分のマグカップを持ったまま、応接用のふかふかソファーにどさっと遠慮なく沈み込んだ。  それを無言で睨みつけているのはもちろんと言うか比内さんだが、出ていけと言っても無駄なのはよく分かっているのだろう。  無意味な悪態をつく元気もないほどお疲れのようだ。  顔をしかめたのをそれとなく見届け、机の邪魔にならない位置にコーヒーカップをそっと置いた。 「悪いな」 「いえ」  こっちをニコニコ眺めていた中川さんは堂々と足を組んだ。ソファーの背もたれに左腕を乗っけた。  この人も決して暇ではない。暇ではないけど比内さんをつつく。
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