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「さっきのお坊ちゃんはなんだって? お坊ちゃんと言うにはいい年だったけど」
「聞かなくても分かるだろ。どいつもこいつも第一声は見事に同じだ」
「これは罪に問われるのでしょうかー???」
「人を後ろから刺しておきながら自分だけは罪にならないと考えてる連中は頭がおかしい」
「仕方ないって。自分が握ってるのは尖ったナイフじゃなくて綿あめだと彼らは思ってるんだ」
中川さんの声は場違いに明るい。比内さんは苦々しそうに舌打ちを。
「あんなのにも弁護士を訪ねる権利は与えられてる事が残念だ」
比内法律事務所の代表弁護士は弁護士が絶対に言ってはいけない事でも平気な顔をしてサラリと述べる。
「いいじゃん、いいじゃん。頭がフワッとしてるホモサピエンスから金巻き上げてるとでも思いなよ」
代表弁護士の右腕たる大人も弁護士が言ってはならない発言を平気な顔してケロリとブチかます。
比内さんからは手元のファイルを渡されて棚を指示された。
資料がしょっちゅう山積みになっている中川さんの執務室とは違ってこの部屋は常に整然としている。
分厚いファイルは定位置に戻した。
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