もどきの呪い

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「うわー、ザ・田舎だな」 船でしか行き来のできない小さな島。 大学を卒業したての倉橋 圭は、山の緑と、海と空の青しかない風景に、すでにわかっていたこととは言え、改めて色々と諦める覚悟をする。 カラオケBOXやゲームセンターのない、日常の生活用品さえ島民がほぼ同じメーカーとなる生活だ。 ネット通販を使えば送料が別途かかるのは必須なので、考えてまとめ買わないといけなくなる。 それでも、全てが絶望的な気持ちでやってきたわけではなく、未来ある若者としてそれなりの希望も持って乗り込んできていた。 明日には圭も先生と呼ばれるようになるのだ。 「よし、頑張るぞ」 気合いを入れて波に揺られる圭が最初の赴任先にここを選んだ内実は、教育実習の時にお世話になった学校で30人以上もいる1クラスをまとめられるか不安に思ったからだ。 その点、ここは全校生徒を合わせても12人だけの少なさが決め手という、なんとも後ろ向きな理由なのだが、圭自身は前向きなやる気に満ちていた。
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