19.邂逅

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チロン。チロン。 カラフルな傘が広がる中、陳腐な音が虚空に鳴り響く。 鳴っているのは、刀の男の魔導書のようだ。 「ちっ、おもしれぇところなのにねぇ」 男は僕らの猛攻を凌ぎながら、魔導書を可視化させ、その着信に応える。 『モリソン、こっちに来い……ッ』 魔導書から漏れ出すのは、聞き慣れた男の声。 声を聴くだけでも、怒りが沸き立つ。 やはり、この男も、“奴”の仲間。 「楠木――」 僕はその怒りを乗せるように、更に傘を生成し、男――モリソンに飛ばす。 「なんだぇ、もう仕事が終わったんかぇ?」 モリソンは動じない。 傘を叩き落し、切り伏せ、時に軽やかなステップで躱す。 まるで、小さな子供たちと遊んでいるようにさえ見える。 『逆だ。戦況が悪い』 「三傑の死体を手に入れたら無敵なんじゃなかったんかよぃ」 『何度言えば分かる……ッ、あれはまだ――』 魔導書の向こう側から聞こえるのは爆発音。 まだ戦闘は続いている。 いや、それどころか戦況は優勢。 秋人達が上手くやったんだ。 『あれはまだ使えない……! ここを凌がなければ、全てが無駄になるぞ!?』 通話越しではあるが、これほどまでに取り乱している楠木は初めてだった。 完全無欠。 掴みどころのない冷血漢。 その印象が微塵も感じられない。 「おーけぃ、おーけぃ。そんなに取り乱すコナンはなかなか見れないからねぇ。相当にやばいんだろうねぇ。今から行くからちょいと待ってな。それにもう少しすれば、アイツが……」 『そんな悠長な――』 また大きな音が楠木の声を遮った。 モリソンは「あれま」と悠長な声を洩らしながら、魔導書を閉じた。 「まっ、そういうことだから」 モリソンは迫りくる傘を手慣れた様子で弾き飛ばすと言う。 「その知恵と勇気と、あとは強運に免じて、今日のところは見逃してやるよぇ」 「ま、待て……」 「またすぐに会えるよぃ。お前さんたちが生きていればね」 そう言い残し、モリソンの姿が消えていく。 行かせるわけにはいかない。 しかし、奴を止める術が何一つとしてない。 「上へ、城の外へ戻ろう……。奴の存在を、みんなに伝えなければ……」
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