第1章

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なぜならば、その死体には、顔が無かったのです。 男はマンションの高層階から飛び降りたそうです。事故なのか、自殺なのか、未だに不明のままですが、落下した際、顔の前半分がどこかに引っかかったらしく、ちょうど首元から前半分が切り取られた状態だったそうです。 その状態は、キャベツを半分に切ったような様子だったため、顔を確認することは不可能でした。 祖母は早速、私の両親にこの出来事を話しましたが、発見した場所が人が近寄らないベランダの裏だったことと、以前の女性の自殺のこともあり、当時の私達兄弟には伝わることはありませんでした。 私達は何気なくこのマンションでしばらく過ごしていましたが、ある日、妙に寝つきの悪い日がありました。 私は両親と一緒の部屋で寝ていたのですが、居間に通じるドアは部屋の一番端にあり、棚などもあって寝床から見えづらい位置にありました。 その寝つきの悪い日、私は汗が止まりませんでした。 そして、 カチャ・・・ 明らかにドアの開ける音、誰か家族の誰かが入ってきたのかと思いましたが、いつまでたっても足音が聞こえてきません。 私はその間、汗をかき続け、気がつけば朝になっていました。 ここからは、しばらくして母親から聞いた話なのですが、実は、私の兄弟も似たような体験をしていました。 二人共、口を揃えて、「へんな夢を見た」と言います。 その夢は、真っ暗な部屋の中で、目が覚めると、ドアが開き、誰かが入ってきたそうです。 母親は、以前のエントランスの自殺を思い出し、 「最近、怖いことがあったからね、だから怖い夢を見たんじゃない?」となだめたそうです。 しかし、二人は全く同じ話をしたそうです。 違うの、 真っ暗の部屋の中でドアが開くと、 男の人が入ってきた。 青い作業服を着た男。 男は入ってきて、私の方に近づいてくるの だけど、その男は段々近づいてくるのに顔がよく見えないの、 そこで目が覚めた。 男の顔の半分は、未だに見つかっていないようです。
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