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緑茶を一本カゴに入れ、スィーツのコーナーへ移動する。東京を離れてけっこう経つので、新しいフェアが展開されている。今回は抹茶フェアらしい。
甘いものはご愛嬌だが、濃い宇治抹茶のバウムクーヘン、濃い抹茶のクリーム大福、濃い抹茶のどら焼き、濃い抹茶のパウンドケーキと、なかなか魅力的なラインナップだ。日持ちするものをチョイスして、手当たり次第にカゴに入れる。
『残ったとしても、天音に土産にすればいいしな……とはいえ、さすがに買いすぎか ^^;』
カゴの中の抹茶系スィーツの数々に思わず苦笑する。天としては、天音と同居を始めてからこっち、天音への気配り思考は折に触れてしてきたつもりだ。
じつの親子と判明したから、つねに頭の片隅に浮かぶようになったというわけでは決してない。自分ではそう思っている。自分以外の人間からどう見えているかまでは判らないが。
ただ、これだけははっきり言える。天音がいなかった頃は、コンビニで買い物カゴを手にすることなどなかった。食料(Noスィーツ)とお茶(たまにビールを買うことも)だけなので、片手で済んでいた。レジカウンターでタバコを買えば終了、それが日常だった。
こうした些細なことにこそ、激変が隠れているのかもしれない――会計しながら、しみじみそんなことを思った。
“僕の目が届く限り、本数は減らしてもらうからね!”
「(笑:ナマ言いやがって)あと10……〈LUCKY STRIKEのレギュラーボックス 〉を一つ――いや、11番を一つ〈LUCKY STRIKEのライトボックス 〉」
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