11−2 そして父になる 

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 緑茶を一本カゴに入れ、スィーツのコーナーへ移動する。東京を離れてけっこう経つので、新しいフェアが展開されている。今回は抹茶フェアらしい。  甘いものはご愛嬌だが、濃い宇治抹茶のバウムクーヘン、濃い抹茶のクリーム大福、濃い抹茶のどら焼き、濃い抹茶のパウンドケーキと、なかなか魅力的なラインナップだ。日持ちするものをチョイスして、手当たり次第にカゴに入れる。 『残ったとしても、天音(あいつ)に土産にすればいいしな……とはいえ、さすがに買いすぎか ^^;』  カゴの中の抹茶系スィーツの数々に思わず苦笑する。天としては、天音と同居を始めてからこっち、天音への気配り思考は折に触れてしてきたつもりだ。  じつの親子と判明したから、つねに頭の片隅に浮かぶようになったというわけでは決してない。自分ではそう思っている。自分以外の人間からどう見えているかまでは判らないが。  ただ、これだけははっきり言える。天音がいなかった頃は、コンビニで買い物カゴを手にすることなどなかった。食料(Noスィーツ)とお茶(たまにビールを買うことも)だけなので、片手で済んでいた。レジカウンターでタバコを買えば終了、それが日常だった。  こうした些細なことにこそ、激変が隠れているのかもしれない――会計しながら、しみじみそんなことを思った。 “僕の目が届く限り、本数は減らしてもらうからね!” 「(笑:ナマ言いやがって)あと10……〈LUCKY STRIKEのレギュラーボックス 〉を一つ――いや、11番を一つ〈LUCKY STRIKEのライトボックス 〉」
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